2014年07月14日(月)

叱れる経営者になれ!

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸

 躾(しつけ)をよくし、ルールを守らせるには、会社も絶対にルールを守り社員にも守らせ、世界に恥ずかしくない立派な企業にするのだ、という強い信念が経営者にあれば、大部分の社員もその気になるものです。

  • しかし、経営者が強い信念で教えても守ってくれないよ。
  • 中国人の管理監督者は一般社員を叱らないので困るよ。

 その時は、経営者である貴方が叱り飛ばしてください。

監督者の多くは一般社員上がり

 監督者の多くは、一般社員として採用され、ある仕事が堪能だから、ひどいケースだと社歴が長いからなどの理由で職位が任命されています。

 特に製造現場ではついこの間まで作業者だったのが組長や班長に抜擢されています。抜擢はよいことですが、彼ら彼女らに本当に監督能力はあるのでしょうか?あるいは監督者としての教育をしているのでしょうか?

 専門職の業務遂行能力と、監督職遂行能力とは全く異なります。本当に適性を見て任命しているのでしょうか?

 先日までの同僚を部下に持つ身分となっても、適性の問題および教育不足が原因で、部下を叱れる監督者は稀です。

管理者の多くは管理者候補として入社

 部課長など管理者の多くは、管理者あるいは管理者候補として入社しています。特に急激に会社を立ち上げ、成長させる必要がある会社の場合は既成の人材を求めるため尚更です。しかし、後から入った者が上に立 ち、それに叱られるのはよい気分ではありません。管理者の方でも遠慮して叱らない者が多いのが実態です。

 結果として、監督者も管理者も部下を叱っていません。

部下を人前で叱るなという中国の迷信

 中国人は面子を大事にする、だから「部下を人前で叱るな」という迷信があります。あえて迷信と書きましたが抵抗のある方もおられると思います。面子があるからこそ、叱るべき事項が起きたなら、その場で直ちに叱らなければならないのです。そうしなければ効果はありませんし、叱る機会を失いかねません。それが部下の前であってでもです。叱られる上司を見てそれを反面教師として見た部下が育ちます。また叱られる原因を作った自分を反省します。

 その場で叱らず後でしようと思っても、機会を失ったらますます難しくなります。逆に部下の前で叱ったことを、後で陰に呼んでこっそりと「あの時は皆の前で大声を出して叱って済まなかった、実はこういう訳なんだよ」と話した方がよほど効果的です。

部下を叱ることも職責だ

 管理監督者の職責には「部下を叱る」という項目が入っています。もちろん、「叱る」という直接的な言葉は入っていませんが、風紀を守らせる、規律を守らせる、規則習慣を守らせる、○○の職場を作る、部下の育成、職場の団結などによる目標の達成・・・・などの職責が必ず入っているはずです。それらを達成するためには部下を指導・牽引しなければなりません。間違った方向に行きそうになったら引き戻さなければなりません。それが緊急であれば叱り飛ばさなければなりません。それが職責です。

 職責が決まって無い?

 無ければ作ってください。それが経営者の職責です。

守らない者には叱る

  • 規律やルール違反をした部下には直接上司たる監督者が叱る必要があります。
  • 部下を叱れない監督者には、管理者が叱る必要があります。
  • 監督者を叱れない管理者には、経営者が叱る必要があります。
  • 管理者を叱れない経営者には、誰が叱るのか?・・・・誰も叱れません。自から辞任すべきです。

 簡単に「叱る」と書きましたが、叱ることは褒める以上に難しいことです。愛情を持って・・・とか本に書いてありますがとにかく難しいことです。しかし、監督者として管理者として、経営者として職責を果たすためには、叱るべきところでは叱らなければならないのです。

社員教育で徹底

 毎号書くことですが、以上を階層別に自覚をしてもらうためには社員教育しかありません。ルールブックに書いても意味がありません。特に幹部教育の中で徹底すべきですね。

佐藤 忠幸

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野

企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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