2011年04月12日

「外国企業常駐代表機構登記管理条例」概要

上海開澤律師事務所 パートナー弁護士 王 隠

2008年の金融危機に伴う景気低迷を経た現在、外国企業の在中投資が急増しており、多くの外国企業が中国国内に代表機構を設立しようとしています。

これを背景に、2010年11月19日、「外国企業の常駐代表機構登記管理条例」(以下「条例」という)が国務院より公布され、2011年3月1日、正式に発効、実施に入りました。これは、税務部門の外国企業常駐代表機構への管理が厳格化されてから、許認可、監督管理面においても内容を明確化、規範化したことを示しています。

関連部門によると、一部代表機構には無断で登記事項を変更する、虚偽の証明で登記を行なう、違法に経営活動に従事する等の問題が存在しており、また地域によっては状況が深刻であることも条例公布の重要な一背景であるといわれています。

条例内容のまとめ:

1.外国企業主体資格をより厳格化

「条例」の公布実施後、外国企業(香港・マカオ・台湾地区を除く)が代表機構を新設、又は名称を変更する場合、申請主体が2年以上存続していることを示す開業証明、銀行の与信証明を提出するとともに、それら書類について公証認証を行わなければならない。

【事務所解説】

現在、中国で常駐代表機構を開設するために、日本で有限会社又は株式会社を設立する方法は採用できなくなりました(香港・マカオ・台湾地区を除く)。許認可部門も厳格に同規定に従い執行することを明確にしています。

2.代表機構登記への監督管理の強化

工商部門は、新設の代表機構に対し、「登記証」取得から3ヶ月以内にその所在地等登記事項について現場査察を行う。代表機構が虚偽の文書を提出した、又はその他事実をごまかす行為については、法に従い適時取締りを行う。

なお、工商部門が把握している登記証の期限切れ、住所の無断変更等違法行為のある代表機構については、分類台帳を設け、信用面で要管理監督企業として組み入れる。

【事務所解説】

許認可部門は、常駐代表機構に対し実地検査を行います。内容的には場所、人員及び日常活動を含みます。虚偽の登記又は違法事項が判明された場合、処罰を強化し、且つ不良記録のある常駐代表機構を監督管理の重点とします。

3.登記期限の短縮

代表機構の登記証の有効期限は1年(もともとは3年)に統一され、期限満了後は延長を申請できるが、外国企業の場合、存続証明の提出が必要である。

【事務所解説】

許認可部門の紹介によりますと、同規定は主に今年一部外国企業又は中国人が海外の架空の外国企業を通じて設立した常駐代表機構が違法な活動、例えば常駐代表機構が実際には就職していない外国人の就業証を申請することなどを防ぐためです。

4、 駐在代表の人数制限

代表機構の代表(首席代表、一般代表を含む)人数は4名までとされた。

現在の代表人数が4名を超えている代表機構は、原則として代表の抹消は認められるが、新規追加は認められない。

【事務所解説】

近年、外国人が代表機構を登記することで就業証、居留許可を取得する現象が増える傾向にあり、今条例では代表機構の代表数を明確にすることで、現在の無制限に登記されている状態を規制されます。

5.年度検査範囲に組み入れる。

代表機構は毎年3月1日から6月30日の間に工商登記部門に年度報告を提出し年度検査を受けなければならない。これに違反した場合、最高で3万人民元の罰金が科される。

6.違法経営の法的責任を明確化

代表機構が法律に違反して営利性の活動に従事した場合、最高で50万人民元の罰金が科され、事情が深刻な場合は、登記証が取り消される。また、代表機構が違法な経営活動を行った場合、代表人員も公安局出入局管理部門に処罰される。

以上、同「条例」では、許認可部門の常駐代表機構設立への審査及び設立後の常駐代表機構への監督管理についていくつかの重要な基準を明確にしました。

設立主体は、2年以上存続していること、そして人員は4人を超えてはならないということです。

許認可部門が、代表機構に現場査察を行うことと条例の規定を厳格に実施する傾向にあるため、外国企業、そして代表機構は注意しなければなりません。

行政としては、駐在員事務所の厳格化を図る目的だとうたっていますが、真の狙いは、駐在員事務所という中途半端で、設立容易な組織を止めさせ、現地法人化の促進にあるのではないかという見方もあります。

王 穏

王 穏

ジョイ・ハンド(開澤)法律事務所
パートナー弁護士 (上海在住)

専門分野

投資スキーム・行政許認可・労務管理・契約法

東京大学法学士、一橋大学民法修士卒業後、黒田法律事務所、アンダーソン・毛利法律事務所、TMI総合法律事務所、中倫金通法律事務所等の大手法律事務所で経験を積む。
2003年には、「中国投資・契約交渉の実務」を出版するなど、寄稿多数。
日系大手銀行、中小企業基盤整備機構、海外職業訓練協会主催のセミナーなど日系企業向けのセミナー、講演は多数。

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