2011年08月23日(火)

安全作業のやり方について

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁

中国では最近、鉄道その他で事故が多発しており、安全軽視の風潮に批判が集まっています。安全よりも納期や利益優先の思想は、国家の基本方針からも反し、とんでもないことです。安全より優先するものはないはずですね。

どの会社や作業現場に行っても、「安全第一」の看板がありますが、本当にこれを理解し、実践しているのか、教育をしているのか怪しいものです。

日本産業訓練協会の監督者訓練(TWI:Training Within Industry)の中国版においても「安全作業のやり方」が追加され、注目を浴びています。

TWI(4J)について

TWIは元来、[仕事の教え方(JI)]・[人の扱い方(JR)]・[改善の仕方(JM)]の3コース(これを「3J」という。)から成り立つもので、企業内訓練の中でも最も標準化ができており、いずれも10時間で教えるように作られています。この「3J」に加えて、日本独自で開発されたものに、[安全作業のやり方(JS)]というコースがあります。これは社団法人日本産業訓練協会で開発されたものですが、10時間以上で教えるように作られています。

本年より中国でもJSコースが導入され、上海麗宝商務諮詢有限公司においても、7月に中国初のトレーナ養成講座を開催したばかりです。

以上4コース(「4J」という。)は、「職業能力開発促進法施行規則」にも明記された訓練です。

安全作業のやり方講習(TWI-JS)について

まず、安全作業とは何か、そして「安全とは事前に対策を考えて処置することである。起こってからの事後処置ではない」ことをはっきりと認識することから始まります。

次に、災害事例について「災害連鎖方式」という原因分析を行い、事故や災害がなぜ発生するのか、そのプロセスを研究します。これは事故や災害が単に偶発的に発生するのではなく、必ず何らかの原因が影響しあって発生することを理解するためのものです。

また、全体を通して、監督者が職場の安全推進のキーマンとして「人間の尊重」と「要因の究明」に心掛けるよう強調しています。TWIではおなじみの4段階法も、「安全作業のやり方」として次のように設定されています。

安全作業のやり方の4段階

第1段階:事故となる要因を考える
第2段階:対策を考えて決める
第3段階:対策を実施する
第4段階:結果を検討する

JS(安全作業のやり方)の目的と強調点

JS講習の目的は、監督者が自分の職場の異常を発見し、発生するであろう事故を予測し、それに対処する方法(問題解決の手法)を身に着け、安全作業をするよう部下を指導できるようにすることです。

TWIは定義や理論をなるべく言わず、これらを事実のなかから掴み取らせようとしています。

すべて 実践→やらせてみることにより身につけさせる(習慣化)ことが主体→技能化。

基本思想→人命の尊重であり、要因の究明である。

JS(安全作業のやり方)の基本構成

B.C(ベージックコース)
→ 原則を技能化
F.C(フォローコース)
→ 現場への適応
JSの各回の目的と急所

第1回
事実と災害連鎖の関係を示し、事実をつかむことの重要性を理解させる。カード紹介

第2回
第1回の練習で理解した、連鎖と事実の関係を基にして、災害連鎖をカードに結びつける(カードの使い方)

第3回
前回、覚えた思考課程を用いて、事実だけとカードの関係との関係を学ぶ(未然防止のカードの使い方)

第4回
第3回の未然防止のやり方を実際の職場の問題に利用してカードの現場への適用を訓練する。

第5回
安全点検、リスクアセスメントのやり方とまとめ

監督者教育とその継続性について

監督者の役割は重要であり多岐にわたっています。しかし、監督者に、部下の指導方法その他の教育訓練をしなければ、監督者の役目を果すことは困難です。

変革の時代に求められるのは、監督者・リーダーの質の高さです。企業の永続的発展のために、監督者教育が重要です。また、トレーナを社内におき継続的に監督者・リーダーを育成することも必要だと思います。

TWIについて

「社団法人 日本産業訓練協会」により確立され、今日まで生産部門、サービス部門のほか、あらゆる業種において企業内教育の原点として広く活用され、日本の産業発展の基礎となっています。

TWIとは、Training Within Industry の略であり、直訳すると「産業内訓練」となりますが、これを「監督者訓練」と意訳して名付けたものです。その名の通り第2次大戦中、徴兵でベテランが手薄となった監督者層向けにアメリカで作られた訓練であり、戦後日本にも導入され、日本独自の発展をしてきたものです。

中国での初めてのトレーナ養成

 2009年から、上海麗宝商務諮詢有限公司は、「社団法人 日本産業訓練協会」と提携して、JI(仕事の教え方)、JR(人の扱い方)、JMs(改善のしかた)の3つが導入された後、初めて中国でTWI/JS(安全作業のやり方)のトレーナ養成コースを開催しました。

「職場の安全」は、労務管理上の基本であり、最も重要であることはご承知のとおりです。

JSの指導頻度は非常に高いものがあり、このトレーナを社内に数名確保したいとのご要求が高いことから、今年の7月にJSトレーナ養成講習会を開催の運びとなりました。

日本産業訓練協会ホームページ

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/sankun/tokyo/index.html

叶 暁

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理
(上海在住)

専門分野

労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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